会場は、中心部に建つ有名ホテルだ。
圭祐とエレベーターに乗り込むと、一気に緊張が押し寄せてくる。
そんな私に気付いたのか、圭祐は優しく背中を叩いたのだった。
「緊張しなくても大丈夫だよ。俺もいるから。それにこの会合は、水川社長さえ抑えておけば大丈夫」
「ありがとう。ところで、水川社長って?」
敦貴と同じ名字にドキッとする。
「ベンチャーの社長でさ。若いのにやり手で、あっという間に会合の中心になったんだ」
「それって、奥様が中心って事?」
今日は、社長夫人の集まりなのだから、当然、その奥さんが中心にいるはずだ。
だけど、圭祐は苦笑いで首を横に振った。
「独身だよ。それに、夫人の会合ってのは、ただの口実。その方が、フランクに集まれそうな感じがするだろ?まあ、とにかく行ってみれば分かるよ」
一体、今日の集まりは、どんな雰囲気なのだろう。
凌祐も、「変に気負う必要はない」と言っていたけれど。
フロアに着き、受付を済ませたところで部屋に入ると、そこはまるで社交界のような景色が、広かっていたのだった。