凌祐が、初めての人ではない。

それは、本人も知っている事で、今まで付き合っている人が何人かいた。

その中で、本気で未来を考えた人もいる。

もしかしたら、この人とずっと一緒にいるのではないか。

そんな風に考えた人がいたのだった。

その人の名前は、水川敦貴(みずかわ あつき)。
5歳年上の敦貴とは、20歳の頃に付き合っていた。

当時、IT関係の仕事をしていて、かなりのやり手だっと聞いている。

背が高く、細身の敦貴は、涼しげな顔立ちの黒ぶちメガネが似合う、インテリ系イケメンだった。

3年付き合って、結婚も視野に入れていたのに、敦貴から突然別れを告げられ、あっさりと終わってしまったのだった。

今でも、ハッキリとした理由は分からないまま。

あの頃は、立ち直るまでに随分、時間がかかったものだ。

そしてこの指輪は、結婚の話が出た時、クリスマスに貰った物。

「プロポーズのプロポーズだから、これはLOVE RINGというんだよ」

と教えてくれたのだった。

ちなみにLOVE RINGとは、敦貴が造った言葉で、本人の中では婚約指輪や結婚指輪と区別する意味で使っていたらしい。

「あのインテリ顔で、結構ロマンチストなのよね」

思い出し笑いをしながら、指輪をそっとしまう。

ちょうど、その時チャイムが鳴り、圭祐が迎えに来たのだった。