とはいえ、余韻に浸ってばかりもいられない。
何てったって、今日は“社長夫人の集まり”があるからだ。
様々な業界の社長の奥様たちが、一同に介する集まり。
年に数回開かれる集まりに、顔を出すのも社長夫人としての“仕事”なのだ。
そして今日の集まりこそ、私のデビューの日。
夫人の集まりといっても、夫である社長たちも同行する事が多い、いわば情報交換としての集まりだ。
だから、今日は圭祐が同行する事になっていた。
「迎えに来る前に準備しなくちゃ」
急いでチェストを開け、アクセサリーを見繕う。
結婚前から持っていた物だけに、高級な物がない。
見栄を張る必要はないけれど、凌祐の顔に泥を塗るわけにもいかないから、それなりに華やかな物を選ばなければ。
そう思いながら、ジュエリーボックスを探っていると、奥から懐かしい指輪が出てきて、探す手が止まった。
それは、プラチナ製で、真ん中に小さなダイヤモンドが光るシンプルな物だった。
「これ…。ずっと返しそびれてたんだよね」
少しだけ、胸のときめきを感じる。
私が今までで、唯一貰った“LOVE RING”。
それが、この指輪だから。