「凌祐…、苦しいよ」

息も出来ない程のキスに、頭がクラクラしてくる。

お互い、この後が自由なら、このままずっとこうやって、甘い時間を過ごしたいくらいだ。

だけど、それは出来ない。

凌祐が仕事だというのもあるけれど、今日は私にとっても大事な日なのだった。

ここで、流されているわけにはいかない。

「凌祐、遅刻しちゃうよ。それに私も、仕度しなくちゃ」

そう言うと、凌祐はようやく離してくれたのだった。

「そうだったな。本当は、俺がついて行けたら良かったんだけど…」

「大丈夫よ。圭祐がついてくれるから」

笑顔を向けたのは、凌祐を安心させる為だったけれど、少し不機嫌な顔をされてしまった。

「いくら弟とはいえ、美亜とあまり一緒にいて欲しくないな」

子供ぽく拗ねる凌祐に、私は苦笑いを浮かべるしかない。

私を好きだという圭祐の気持ちを、未だに凌祐は知らない。

そしてそれは、絶対に知られたくない気持ちだと、圭祐から言われている。

もちろん、凌祐だけでなく他の人だって知らない。

私と圭祐だけの秘密。

だから、知らないとはいえ、凌祐が圭祐に対して嫉妬心を持つのを見るのは複雑だった。