すると、凌祐は表情を明るくした。

「ありがとう、美亜」

「ううん。正直言えば、少し悔しいけど、凌祐との新しい生活をやり直したいから」

出張の夜みたいに、涙を流すのはウンザリだ。

だけど、凌祐が私を想ってくれるのなら、きっと大丈夫。

それくらい、私の心の中での存在が大きくなっているからだった。

「悔しいって?」

凌祐は、心配そうな顔で覗き込んできた。

「私も佐倉さんみたいに、仕事でも凌祐の支えになりたかったなって」

すると、小さくため息をついた凌祐が、苦笑いを浮かべた。

「そういう事か。俺としては、美亜が家にいてくれる方がいいんだけどな」

「ストレスが減るからでしょ?」

覚悟をしておく。

きっと、これからの方が大変なのだろうと。

だけど、凌祐は「違うよ」と微笑みながら言ったのだった。

「もちろん、それもあるけど、俺は美亜を独り占めしたいから」

「独り占め…?」

「そう。圭祐にも、他の人たちにも、美亜を目に触れさせたくない」

そう言って、凌祐は優しく私の頬に触れ、唇を重ねたのだった。