「その代わり、仕事は真面目にやる。ばあちゃんの作った事務所、一緒に育てていこ。そのためだったら、俺も全力を尽くす」




電話口の高木ちゃんの顔が、目に浮かぶよう。




本音を語られたことは悲しいけど……郁実の温かい言葉に、きっと笑顔になっているはず。




優しいな……。




そして、やっぱりジェラシーを感じちゃう。




一緒に育てていこ、とか…




勘違いするってば!




ずっと郁実と一緒にいられるって、思うはず。




いつか、郁実は独立するかもしれないのに。




あたしと……いつまで別れたフリを続けるつもりなの?




婚約者とか言いながら、




結婚はずっとお預け?




口約束の不確かさを、




今、思い知らされた気がする。