「……郁実はどこ?」



白雪ちゃんがキョロキョロしながら、辺りを見渡す。




「アイツ、逃げたんじゃね?」




男のウチの一人が、そんな言い方で舌打ちをする。




「あの……郁実は……あとで来るから……」




直感で、ただならぬ雰囲気を感じて一歩後ずさる。












この男の人……社長じゃない?




どう見ても同世代だし、ダメージジーンズに胸元の大きく開いたシャツといった身なりで、なんだか品がない。



「ウソつき真央ちゃん。ホントに郁実は来るの?」



白雪ちゃんが、薄笑いを浮かべる。



「ウソつきって……」



「昼頃にミキオが郁実と連絡をとったら、空港にいるって言われたらしーけど?ホントにここに来るんだよね」



サーッと血の気が引くのがわかった。



あたしの表情から何かを感じとったのか、白雪ちゃんが突然あたしの髪の毛を鷲掴みにした。



「キャーッ!!やめてっ!!」



「お前、ナメてんのか!?あたしを騙してタダですむと思うなよ」



頭を振りまわすように、思いっきり髪を引っ張られる。



いきなりのことで、何が起こっているのかわからないぐらい、あたしもパニックに陥る。



まさか、白雪ちゃんがこんなことをするなんて……。



なにかの間違い……だよね!?



白雪ちゃんが手を離したのか、そのまま地面に投げだされた。



激痛と共に、気付けば顔の前に地面があって、口の中に砂がいっぱい入ってジャリジャリする。



同時に頭に激痛が走り、激しく目がまわっていて立つことすらできない。