「フッフッフ…どうするんだ?」



「わか…り、ました。一応、説得は…してみます。だけど、郁実が素直に聞くとは思えない」



「だから君に頼んでいるんだろう?うまくいかなければ、交渉不成立だ。

どうなるのか、わかっているな」


学園長のいいなりになるのが、悔しくてたまらない。


だけど…


全ては、郁実のため。


あたしは静かに、頷いた。


悔しさと、悲しみでいっぱいだよ…。







「これで…話は、ついたな。君の判断は、間違っていないよ。

井上くんだって、海外に行くことが後の糧になるはずだ。帰国子女としてデビューした方が、話題性もあるだろう」


「郁実は…向こうに行ったら、もう…しばらくは、日本に戻って来れないんです……。

それに、今のメンバーと…デビューしたがってるから、他の人とじゃ、意味がないんです」



「ほぉ、そうか…。まぁ、井上くんがデビューしたときには、花でも送るよ。それも、最高級のな。ハッハッハ」


これ以上ここにいるのがツラくなって、


あたしは学長室を、急いで出た。


高らかに嘲笑う、学園長の声が耳の奥に残る。


ああ…


とんでもないことを、引き受けてしまった…。


一番したくない選択を、あたしはしなくちゃいけない。