だけど、こんなこと…あたしが判断していいわけない。


この間のオーディションのことだって、白雪さんの計画だってことを黙っていて、


郁実に叱られたばっかりなのに…。


その場から動けないでいると、学園長が電話を手に取った。


「まだ、迷っているのかな?それなら、今ここでマスコミに連絡しようか。

面白い記事になるだろうな、ストーカー退治のヒーローは、実は学校一の問題児だった」


「なっ…」


「女子生徒を次から次へと食い荒らし、校内暴力も多々。いわゆる、トラブルメーカー」



「郁実は、そんなことしてません!」



「現に、女子生徒からの相談を何件か受けているんだ。

その気にさせて、体の関係を持った途端、すぐに他の女に乗り換える」



「それは、相手がしつこいからだって…それに、ちゃんと付き合ってなかったって…」



「そうだろう?高校生にあるまじき行為に加え、人としてのモラルも欠如している」


「あたしが言いたいのは、そんなことじゃなくて…」



「細かい理由なんて、どうでもいい。トラブルメーカーはこの学校にはいらないんだ。

もしもし、ああ…はい。井上郁実の件で、先ほど連絡した者ですが…」


「やめてーっ!!」



気づけば、学園長の手からケータイを奪っていた。



そして急いで電話を切った。


肩で息をするあたしの横で、学園長が不敵な笑みを浮かべている。