「待ちなさい。このままだと、井上くんは全てを失うことになる。

それでも、三沢さんは見て見ぬフリをするのか?」


「そんなんじゃ、ありません…あたしは…」


「井上くんのご家族も、今回の事件のことでピリピリしている様子だった」


「…それは、どういう」


「世間ではヒーロー扱いだが、本来の井上くんはそうじゃないだろ?」



「…え?」



「聞けば、結構血の気が多いとか。以前中学のときに、人を殴って止まらなくなったことがあるらしい。

今回はどうだった?行き過ぎたことは、なかったのか?」


「そんな…ありません」


確かに、前にミキオくんを蹴ってたときは、すごい剣幕だったけど…そこまでじゃなかったはず。


ストーカーに対しても、あたしを守るためで…。


「井上くんは、元から生活態度も良くないし、今回はいいように報道されているけれど、

一歩間違えれば、過剰防衛になるところだったんだぞ?」



「過剰防衛なんて…郁実はただあたしを助けるために…」