呆然としていると、学園長が唸る。



「うーん……辛い役目だというのはわかるけれど、お願いできないかな」


「あたしには、できません。郁実の夢はバンドデビューすることで、

それが今…叶おうとしてるのに…そんなこと…できない」



ムッとして学長室を出ようとすると、学園長がゴホッと咳払いをした。


「ゴホッ……待ちなさい。井上くんがデビューしたら、ご家族は縁を切ると言っておられる」


「え……まさか、そんなこと……」


おじさんは、反対してなかったはずだよね!?


「本当だよ。少なくとも、成人するまではダメだそうだ。そんなことになったら、大変だと思わないか?

井上くんのことを思うなら、ここは背中を押してやるのが一番だろう」



「そんなの、あたしは嫌です。郁実と、ずっと一緒にいたい……」








そうだよ……。



郁実の夢を応援したい気持ちもあるけど、一番は郁実と離れるのが辛いの。


白雪さんの話が本当なら、


海外に行ってしまったら、もう…


日本にはしばらく戻って来ないんだよ!?



そんなの…嫌。