郁実と顔を見合わせ、思わずクスッと笑みがこぼれた。



「ところで、さっき君たちが必死にかばい合っていた、一緒に住んでいることだが……」



ビクッ。



ビビるあたしをよそに、郁実はしっかりとした口調で学園長に説明を始めた。



「きちんと学校側に伝えておかないといけないことだったのに、すみません。

突然親の海外赴任が決まり、ここ数か月ほど、親の知人だった三沢さんの家でお世話になっています」



真剣な眼差しで学園長に語りかける郁実は、なんだか別人のよう。



非常事態なのに、そんな大人な郁実にちょっぴりドキドキしているあたしは、不謹慎?



そう思いながらも、やっぱりカッコいい郁実の横顔を、ジッと見つめてしまう。



チラッと郁実があたしを見たから、慌てて目をそらした。








「そうだな…一言学校に連絡が欲しかったところだが。急に決まったことなら仕方がないな。

井上くんは噂よりしっかりした男みたいだし、大目にみよう」



学園長がフッと微笑む。



「ありがとうございます!」



う、噂よりって!



学園長まで、郁実がチャラいってこと、知ってるんだ…。




吹きだしそうになってると、横から郁実に小突かれた。



「笑うなよ…」



「だって…」



「もうすぐ全体朝礼が始まる。急ぎなさい」



「はい!」



学園長に言われるがまま、学長室を出ようとすると。