しまった、今はケンカしてる場合じゃなかった…。



肩をすくめて郁実を見るけど、郁実は堂々として学園長を見ている。



……大したもんだよね。



あたしなんて、怒られるんじゃないかってビビりっぱなしなのに。



きっと、郁実はあたしなんかよりよっぽど度胸があるんだ。



ミキオくんのときも、ストーカーから守ってくれたときも、郁実は全然怖がってなかったもんね。



郁実のそういうところが、すごく好き…。



キュッと郁実の手を握ると、大きな手でしっかりと握り返された。


それだけで、ホントに落ち着く…。 







「今すぐ、体育館に行くように」


学長はなぜか口元をゆるめ、学長室の扉を指さした。


「体育館…?」


「そうだ。警察署長から、郁実くんに感謝状が送られる」


「か…感謝、状…です、か?」


予想外の言葉に、間の抜けた声を出す郁実とあたし。


「警察が手配中の男を捕まえたそうじゃないか。お手柄だぞ。

井上くんは、我が校の誇りだ。勇気ある行動に、私からも礼を言うよ」


な…んだ。


同居のことじゃなかったの…!?


一気に、肩の力が抜けた。