イタズラっこみたいな笑顔を見せて、周りを見回す。



あたしもチラッと周りを確認すると、周りにいる人たちは、みんな一斉にあたしたちから顔を背けた。



「もうっ……郁実のバカ!一昨日からのテレビで、有名人なんだから!変な行動しないで!」



「お~、なるほど。だからみんなジロジロ見るわけか。俺も有名になったな」



「喜ぶところじゃなーい!」



頭をポカッと叩くけど、ヘヘッて笑ってるし、全然懲りてないみたい。









怒ってる最中に信号が青になって、郁実がペダルに足をかけた。



「スピードアップ!しっかり掴まってろよ」



ええっ!?



スピードアップって、この先下り坂なのにっ!



「きゃーっ、きゃーっ、きゃーっ!!」



「うるせ~」



うるせ~って言いながら、郁実はあたしの反応を楽しんでいるみたい。



ホント、郁実のこういうちょっとイジワルな性格、困っちゃうよ……。



だけど、一緒にいるとすごく楽しい。



必死で叫びながらも、



下り坂を急降下するスリル感を、あたしも結構楽しんでいた。