自転車に二人乗りして、あっという間に家をあとにした。



振り落とされないように、郁実の腰にギュッとしがみつく。



「郁実……あの人と、付き合うの?」



「……は?」



信号待ちってこともあるけど、郁実が急にブレーキをかけた。



「きゃっ……いきなり止まらないでよっ!危ないよ」



「お前が妙なこと言うからだろ。俺が誰と付き合うって?」



「だって、あんな綺麗な人……きっと、テレビを見てウチに来たんだよね……」



そう言ったら、郁実がため息をついた。








「フーッ……そうだなー。たまには、大人の女も悪くないかな」



「そんな……ヤダ。郁実は……あたしを、裏切るの?」



背中越しで、顔が見えないからちょっと素直になれた。



思いっきりしがみつくと、郁実がケラケラと笑いだした。



「ハハッ。ちょっとお茶だけ飲もうって誘われてて。行ってもいー?」



嬉しそうな声に、動揺する。



「ええっ!?ダメ!!浮気したら、別れるから!!」



慌ててそう言うと、郁実のお腹にまわしている手を、ギュッと握られた。