カバンを提げて、玄関に行くと郁実が靴をはきながら待ってくれていた。



「お待たせ」



「ん。ちょっと真央、こっち来て」



「きゃっ」



腰を引き寄せられ、またキスされるのかと思って目を閉じたら、そうじゃなかった。










「玄関出たら……ダッシュするぞ」



「えっ?」



「とにかく!いいな?」



「ウソっ……お母さんが、もう来ないで下さいって話したのに?」



「いーから」



郁実はあたしの手をギュッと握ると、勢いよく玄関のドアを開けた。



そして、ふたりで自転車が置いてある場所まで、猛ダッシュ!!



「あっ……待って!!」



そんなあたしたちに声をかけてくる女の人が。



横目でチラッと見たところ、黒髪を後ろでまとめてスーツを着ている、小奇麗な印象の大人の人。



「郁実くんっ!さっきの話、考えておいて!?いい返事がもらえるまで、また何度でも来るから」



……?



いい返事って、もしかして……。