「部屋に戻ってカバン取ってくる!」



逃げるあたしを見て、郁実はただ嬉しそうに笑っていた。










あ~、知らなかった。



郁実って、キス魔だ。



今以外にも、ちょっと家の中ですれ違ったときとか、ホントに軽くチュッてしてくるから、避けようがないっていうか。



昨日も、何回もされたし……。



その度に、急に大人しくなるあたしの反応を見て、楽しんでいるようにも見える。



あたしはそういう郁実の行動に慣れなくて、動揺させられてばっかり。



だけどキスされると、やっぱり嬉しい……んだよね。



こんなあたしは、



どれだけ郁実のことが大好きなんだろう。



部屋に戻って、キスされたときのことを思い返していると、机の上に置いていたケータイが鳴った。



わわっ!



急いでケータイを手にして、電話に出る。



「友ちゃん、おはよ!……えっ、テレビ?」