少し落ち着いた月島さんは俺に気づいたのか
佐藤さんにこれ、だれ?と聞いた。

「あ、申し遅れました。結城椋です。」

「ここに新しく入った新人さんやで。」

「ふーん…。月島怜司だ。」

月島さんは俺を下から上までじっくり眺めるとふっと笑った。

「佐藤。今度の合コンコイツ呼ぶなよ。」

「えーなんで?」

「ざけんな。女はこの手のベイビーフェイスが好きなんだよ。」

そういって自分の席に行った。
彼は右の真ん中の席。後残りは三人か。

「てかそいつが新しい部長かよ。」

「え、結城くん部長なん!?…椅子変えんかったらよかった。」

「バカか。なんで椅子変えたんだよ。俺そいつのためにわざわざスポンジ抜いたりしてたのに。」

あの椅子は月島さんのせいか。
やっぱり新しい部長いじめだったのか。

「知憲(とものり)の話きいてなかったのかよ。」

「うん。画面のむこうの女神たちに釘付けやった。」

月島さんは大きく舌打ちをすると長い足をこっちに向けておいた。

「新部長さんよ。この部で無駄な改革はよした方がいいぜ。身のためだ。」

月島さんが俺をじっと見つめた。
なにもかも見透かされたようだった。
…踏み台にしようとしていることも。
長い沈黙。
栄さんのキーボードを打つ音だけが響いた。







ガチャリ。








またも扉が開いた。
入ってきたのは男性だった。
静寂を切り裂いたからというのもあったが
俺はその男性から目が離せなかった。

「おせーじゃねぇか、知憲。」

「っせーよ。また普通に出席してたことにしといて。」

男性は顎髭をたくわえて
髪型をツーブロック、ツートンカラーにしてはいたが
俺はこの男性をよく知っていた。


だってこの人は


「おはよー、のりさん。新人さんいらっしゃったで。」




この人は俺の




「ん、あれ?」






俺の










「結城じゃん。」













俺の永遠の憧れの人。