オフィスの窓をふきおえる。
ふぅ、こんなものだろう。
ゴミ袋の中にさっき窓を拭いた新聞紙をいれる。
口を固く結び、体を翻すと一週間前まで存在しなかったきれいなオフィスがあった。
時間があるからとつい、熱を入れすぎてしまった。
スティールラックには番号順・あいうえお順に資料(過去の企画書・プレゼン資料の余り)が並べてあり、その下の戸の中にはホッチキスなど文房具が多数はいっている。

(何に一番驚いたかって黒い油虫の多さよりもホッチキスの量が文房具の殆どを占めていたことだよ。)

時間も時間だし雑巾バケツを洗って掃除をおわろう。
出て行く途中、横目でちらりと栄さんをみる。
栄さんは他の部署から頼まれた仕事をしているようだ。
といってもホッチキスで止めるようなものではなく、アンケートや調査内容の統計を求めるような仕事。
栄さんは自分の気に入るものさえ渡してくれればどんな仕事でも引き受けてくれるので、楽して仕事をさぼれる、というわけだ。
でも、そのおかげでこの部に仕事がはいってくれるので気持ちとしては複雑だ。

おっと、こうしてはいられない。
俺はドアに手をかけた。