「駄目だ。」

売り込みにいった先で出会った商品開発部の名瀬さんに企画書を渡しみてもらった。
自信満々だった俺は即刻OKがくるものだと思っていた為
一瞬名瀬さんがなにを言っているのか理解不能だった。

「確かに少し時期が早い気もしますが、うちはこのジャンルが苦手で他社に遅れを取っています。もっとよく考えてみてください!」

「駄目駄目、絶対駄目。」

名瀬さんは全く取り合ってくれない。

「なんでなんですか。」

「そういうのは冷菓部の方に任せているから。君、冷菓?」

「いえ、菓子です・・・。」

「でしょ?冷菓は冷菓。菓子は菓子。菓子のできることあるから。」

「じゃあ…!」

念のために用意したふたつの企画書を鞄から取り出して前へ出す。
お菓子がどんなことをするのかわからなかったからだ。
ひとつはスナック菓子、ひとつはまさかな、と思いながらつくった駄菓子。
どちらも真面目につくった、手は抜いていない。
名瀬さんはふたつの企画書をぱらぱらとめくり、閉じた。

「駄目だ。」

「どうして!」

「菓子の中にもジャンル別に部署が置かれているからだ。他の部の仕事はとれない。」

彼は残念そうに眉を下げていった。

「なら俺たちは何ができるんですか!?シャーベットやスナック菓子なら仕方がありませんが、駄菓子は部としてないじゃないですか!」

つい暑くなってまくし立ててしまう。

「…俺も残念だ。君が作った企画書は本当によくできている。今すぐ企画を通したいくらいに。」

「だったらなんで!」

「…さっきもいったけど他の部署の仕事はとれないんだ。…もし、君さえよければこの企画書を他部署に回したいんだが。もちろんただとはいわない。君にも開発には加わってもらいたい。そのために他の部署に移ることを上司に進言してみるし。」

なにをいってるんだ、この人は。
駄目だ駄目だと突っ張る割に、自分の手柄はあげたいっていうことか。
残念だったな。

「結構です。あなたのためにつくった企画書じゃないんで。」

「違う!待ってくれ。僕は本当に君の企画したお菓子が食べたいんだ!」

この期に及んで…!

「じゃあ次は菓子をもってくるので、楽しみにしていてください。」

俺はそう吐き捨てて開発部をあとにした。