「いや、大したことじゃないんだけどね。」

「…ごめん、できるだけ短くお願いできる?」

あんまり長い話は苦手だ。

眠たくなるし、聞いている途中に最初の方の話を忘れてくるから。

すると、桜田が急に笑顔から真顔になった。

そして、ゆっくりと俺に歩み寄ってきて、言う。

「ねえ、沢嶋さんの、どこがいいの?」

「は?どこがいいのって何。」

「だって、好きなんでしょ?沢嶋さんの事。」

「…は、お前何言って」

その瞬間、桜田が俺の後頭部に手を回して自分の方に引き寄せた。

そして俺の唇に自分の唇を押し付けてくる。

…つまりは、キス、されたのだ。

その瞬間、僅かにシャッター音のような音がした。

俺は思わず桜田を突き飛ばして、制服の裾で口を拭う。

桜田は少しよろけたけれど、すぐに顔を上げて俺を睨んでくる。