「…何。」

「…ごめん、なんか、ちょっとくすぐったくて。」

「あぁ、そう。」

はい、とハンカチを返すと、俺の指の先が少しだけ沢嶋の手に触れてしまった。

その時、沢嶋が目を見開く。

「…何…。」

そんなにびっくりする事?

それともそんなに俺に触られたのが嫌だった?

「い、いえ!あの、何でもないでございます、はい。」

何その変な敬語。

「…ふーん…。それならいいけど。」

沢嶋は無言で左胸をぎゅ、と抑えて、俺から目をそらした。

何、頭だけじゃなくて心臓も悪いの。

馬鹿は風邪ひかないんじゃなかったっけ?

あぁ…バカは風邪ひいたのにも気付かない、んだっけ。

……本当…変な奴。