「…え…。」

汚れるよ、と言ってハンカチを返そうとすると、沢嶋は首を横に振った。

「いいの!私が貸すって言ってるんだから君は変な遠慮しない!」

早く拭いて!グロテスクだから!

と騒ぐ沢嶋に、悪りぃ、と一言いってからハンカチで口のあたりを拭った。

「…うん、だいぶグロくなくなった!」

沢嶋がにこりと笑う。

「…保健室行く?」

「いや…。」

「そう?…あ、ハンカチ、もう大丈夫?」

沢嶋は俺の手からハンカチを取ろうとした。

俺も思わずそのまま手渡しそうになったけど、慌てて手を引っ込める。

「え?まだ必要だった?」

沢嶋はきょとんとした顔で俺を覗き込んでくる。

「…いや、洗って返す。かなり汚しちゃったし。」

さすがにこんな血だらけのをそのまま返すわけにはいかない。

「…え、いいっていいって、本当に。全然気にしないから!」