「…あの、さ?沢嶋さん?」

「何?」

まだ何か。そう思って振り向いたら思い切り抱きしめられた。

今度は劇の練習でもなんでもないのに。

「…な、な…佐野君!?」

「もし、川村との仲がキツくなったら、迷わず俺の所おいで。絶対沢嶋さんに辛い思いとかさせないし、幸せにする自信あるから。…俺、沢嶋さんがこの学校に転校してきた時から、ずっと沢嶋さんの事好きだった。沢嶋さんを思う気持ちは誰にも負けないから…。」

「…うん、分かったよ、佐野君。…ありがとう。」

私はにこっと笑って言いました。

正直、川村との仲がキツくなったらとか、縁起でもないこと言わないで欲しいんですけど。

これが佐野君なりの思いやりなんだろうな。

私は佐野君の腕を抜けると、屋上を出ました。…うう、屋上にいたときは気がつかなかったけど、今日結構寒いなあ。

階段を下り、体育館に向かう。

荷物置いてきちゃいました。

「…あ。日娘ちゃん。」

「…え?」