…はぁ。

本当に憂鬱。

確かに佐野君は整った顔立ちしてるなあとは思うけど、きゃあきゃあ言うほどではないし、私はあんまり好きになれない。

ナルシストっぽくないですか。あの人。

だって、セリフの言い方からして自分に酔いしれてましたもん。

だから、あんな人と文化祭の劇やるのかーって思うともう…。

「…あ。」

今一番会いたくない人と出くわしました。

相手も私の方を見て気まずそうにしてるし。

「…川村。」

私が声をかけると、川村は相変わらずの鋭い目つきで私をじとっと見てきました。

ああ、いつもは大好きな目なのに。

鋭いけどどこか優しい目が、いつもは大好きなのに。

今は一刻も早く目線をそらしたい。

自分で声かけたのになあ。

「…俺、部活あるんだけど。……用事無いなら引き止めんなよ。」

よく見たら川村は部活の練習着を着ていて、片手にスポーツドリンクを持っていました。

「ごめん…ね。」

少し喋らないだけで、こんなにも喋り方ってぎこちなくなるものなんですね。