「その間にも佐野君のセリフは進んでいく。

私はそれにテキトーに相槌をうって

思考回路は上の空。

「…あの、さ。」

「…ん?」

佐野君の声でハッとする。

「ここ…キスシーンなんだけど…。」

「……へ!?」

いやー、それはちょっと。

「それは飛ばして。」

私はそう言うとそっと佐野君の腕を抜けました。

体中に香水の匂いがこびりついていて思わず顔をしかめる。

「…喉渇いちゃった。自販機で飲み物買ってくるね。」

「あ、俺も行こうかな。」

「え?何飲みたいか言ってもらえれば一緒に買ってくるよ。」

裏をかけば、着いて来ないでってことなんです。

しかも喉なんて乾いてないし、自販機に行くなんて嘘。

早くこの匂いを消したいから屋上に行って風をいっぱい浴びに行くんです。

…何飲みたいの?佐野君。」

「…いや、やっぱりいいかな。女の子に行かせるのって申し訳ないから。俺は俺で買いに行くよ。」

「そう。じゃあ、ちょっとしたら戻ってくるね。」

私はそう言って体育館をでました。

正直言って戻りたくないですけど。