周りの女子はきゃあきゃあ歓声を上げて、『羨ましいー!!!』とか言ってるけど、私はもう何がなんだか。

…離してよ。

そう言いかけてハッと口をつぐんだ。

そうだ。これは劇の練習だ。

やめてなんて言えない。

あー、嫌だ。

なんかこの人気持ち悪い匂いがする。

何だろう。女の人の香水の匂いがいくつも混じりあった匂いがする。

何でこの人が人気なんだろう。

よく分からないなあ。

川村はもっといい匂いする。

ほわほわで、優しくて、甘くて、いい匂い。

でもこの人の匂いは好きじゃない。

というか嫌い、苦手です。

「愛してるよ…ラプンツェル。」

何も答えずにぼうっとしていたら、

「…沢嶋さん、あの…ここ、セリフ…。」

と佐野君が言ってきた。

「…え…あ…ぁ。」

本当なら『私もよ。』

と言い返すところだけど、佐野君に言いたくないなあ。

私は低い声で、そっと

「…うん…。」

と言った。

シナリオ無視してすいません。

佐野君が私を更にきつく抱きしめた。

ああ、本当に、この人女の子の匂いしかしない。

女たらしって多分まさしくこの人のこと言うんだろうな。