「えっ!?」

「川村が世話してたことは知らなかったらしいんだけど、自分達に吠えたから…って。」

ずきり、と胸が痛む。

ひどい。

「…それで…その捨て犬親子は…?」

「…子犬はなんとか助かった。でも…母犬は死んだ。」

「…それで川村は…怒ったんですか?」

「翌日、そのヤンキー集団がその捨て犬親子を川に投げてこんでいたっていう目撃談を、川村が聞いちまって…放課後、いつもそのヤンキー集団がたむろしてる体育館裏で殴り合いになって…そりゃあまあ大事になったよ。懐かしいなあ…。」

…か、川村は無事でしたか!?

あ、無事じゃなかったら生きてないですよね。

「まあ川村はちょっとアザが残ったぐらいだったよ。ただ、相手のヤンキーのうち一人が、川村に殴られて運悪くコンクリートに頭強打して病院送り。…まあ、幸い大怪我じゃなかったんだけど。」

…よかったですね大怪我じゃなくて。

「生き残った子犬は川村が飼ってるぞ。たしか、ジャック、って名前で。…それから、川村はよりみんなに怖がられるようになっちまって、本当は良い奴なんだけど。あいつもそれで心閉ざしちゃったから、お前がこの学校に来るまで、川村、本当に一人だったんだよ。」

「………。」

「ああ、悪いな、話し込んじゃって。じゃあ、作文の事、よろしくな。」

「は…い。」

私は、「失礼しました」と頭を下げて職員室をでました。