「…なあ、沢嶋、さっきからずーーーーーーーーっと上の空だな。お前。」

ふっと川村の方を見ると、川村は机に頬杖ついてじとっと私の方を睨んでいました。

「…あ…ああ…ごめんね。覚えなきゃ…。」

「…悩み事でもあんの?」

ぎくっ。

「図星か。」

「い、いやあ、まさか私に限って悩み事なんてあるわけないよ!!!あはは。」

「……お前って嘘付けないタイプ?」

はい、バレましたー。

「…何悩んでんの?」

「何でもないよ?」

にこっと笑いを浮かべてみせると、川村はなんだかちょっと切なそうな顔をしました。

「…あ、あの、別に川村のせいじゃないよ?」

「…あっそ。」

「え、あの、怒ってる?」

「別に。」

絶対怒ってるじゃないですか!!!

「…言えないんだよ。」

「は?」

「言いたくても言えないんだよ。仕方ないじゃん。」

お母さんに何か重大な隠し事をされてるかも、だなんて。

言った所で川村は困るだけじゃないですか。

私はそう言うと、台本を手に持って、同じページを永遠に繰り返し読んだ。

声を出して読んだほうが覚えやすいって川村が言ってたけど、

多分今声を出したら情けない涙声だから…。