「…沢嶋。」

「何?」

「痛い。」

「あ…ごめんなさい。」

階段を登りきると、教室が見えてきていました。

さっきのちょっと寂しそうな顔をした川村にうっすらと涙が滲んでしまう。

ひとりぼっちは、どれだけ辛かったんだろう。って。

私もひとりぼっちの辛さがよくわかるから、より悲しくなっちゃって。

私は低い身長を精一杯伸ばして川村の頬にそっとキスしました。

「…っ!?」

川村は声にならない声を上げて、目を見開いて私を見てきて。

「なっ……!?」

「……大丈夫だよ。川村。」

「…なっ…何がだよ。」

あ、ちょっと声上ずってる。

可愛いな。

「ううん、何でもない。」

川村はそれから何も言わずに、りんごみたいに真っ赤な顔をしてうつむいてました。

…本当にシャイだなあ。

大丈夫、ひとりじゃないよ、大好きだよ、川村。

私は再び川村の手を握る自分の手に今度は痛くないように、そっと力を込めました。