ぎゅ、と私の背中に手を回して、川村はそう言ってくれました。

「…ばーか、泣き虫。」

「…ひぐっ…。」

しゃくりあげる私を、川村は笑いながら見てます。

「…つかお前、桜田と高橋追ってったんじゃないの?」

「…みっ…見失った…っ。」

「は?お前のその足で見失うとかどんだけだよ。」

「いや…っ、ちがくて…、その、桜田さんの泣き顔見たら、その、罪悪感が湧いてきて、戸惑ってたら…どっかに…行っちゃってて。」

「…お前、お人好しだな。」

褒め言葉として受け取りますね。

「とりあえず、顔拭けよ。」

「うん。」

ポケットからハンカチを出してゴシゴシと顔を拭く。

「…始業ベル…なったけどそれどころじゃなさそうだな。桜田も逃走したし。」

「…うう…ごめんなさい…急いで戻ろ…?」

「ま、一時間目はどーせ自習だし。」

川村は笑いながら言いました。

「…川村?」

「ん。」