「もー!ちょっとちょっと!!!ストーップ!!そこ!二人だけの世界に入らないで!!!」

新田さんが叫びます。

「…とーにーかーく!!川村は王子役やるの?やらないの?どっち!?」

「………勝手に決めろよ、好きにしろ。」

耳まで真っ赤にした川村が机に顔を突っ伏させました。

……やっぱ照れてるんですか?

うーん、川村の照れのツボってよくわからないです。

「じゃあ、やるってことでいいのね?」

新田さんがニヤリと笑って、私の肩を掴んできました。

「じゃあもちろん、沢嶋さんも主役、やるよね?ね!?」

相変わらず有無を言わさぬ迫力。

「…は…はい…。」

私が言うと、新田さんは、手に持っていたそこそこ分厚い本のようなものを私に手渡してきました。

これは一体。

「あの、これ…何?」

「何って、台本に決まってるでしょ!これ一冊、まるごと覚えてね。」

「えええええええ!?」

この量を!?

まるごと!?

この記憶力皆無な私に、これを覚えろと!?

何て無茶な!!

ペラペラとめくってみると、ワープロで打ち込んだであろう文字の羅列がズラリ。

思わず気絶しそうになりましたよ。