「蝶の羽ばたきはね、地球の裏側にも影響をあたえるんだって 。」

突然の言葉に頭がよくついていかない。

「どいうこと?」

「うーん、捉え方は人それぞれだと思う。」

少し肌寒いからかマフラーを鼻まであげる彼。

「なにそれ(笑)むーくんもよくわかんないの?」

「わからない(笑)けど夜宵はそんな蝶になれ」

真剣に私を見つめる切れ長の綺麗な目。
照れくさくなって、私は目を逸らす。
今日は、明日が来れば終わる。明日も明後日が来れば過去になる。
空は流れたらもう二度と見れないかもしれない。
この世界はすごく不思議だ。

むーくんは私の額、目、鼻、ほっぺの順に軽いキスを落とす。なかなか口にキスはしてくれない。

「口はお前が蝶になったら、そのときはたくさんしてやる。」

むーくんは優しい目で私の目を見つめ、髪をゆっくり撫でる。
初めて切ないという気持ちがわかったそんな、秋の始めだった。