短大2年の春。
1人暮らしをしていた私は、当時流行りだしたキャバクラでバイトをしていた。


中学生の頃から、くっついたり離れたり……5年間付き合っていた彼氏と別れたばかり。

キャバクラと言っても、女子大生のバイトの女の子ばかりで、毎日毎日合コンしてる感じだ。


楽して、お金が稼げる。

そんな感覚でしかなかった。




「凛子ちゃん、お願いしまーす」

ボーイに呼ばれて立ち上がった。


「いらっしゃいませ〜♪」

半年も働けば、慣れたもんだ。


スーツを着たオトナな感じの2人組。



今日1番目のお客様だ。


「ねーねー、凛ちゃん。あの人男爵のマスターらしいよ。」

くねくねと身体を捩りながらマコちゃんが言った。

「ふーん。」


どうやらパブのマスターと、従業員らしい。

「電話番号教えてよー」

マスターと呼ばれる男が言った。

「ふふ…いーよ。」



抵抗は感じなかった。



ウイスキーの下で湿ったコースターを裏返して、自分の電話番号を書いた。



決してタイプの男ではなかったのに……


オトナの男性……19歳の私の瞳にはそう写ったんだ。