幸せ?

幸せかどうかなんて考えるヒマもなかった。


「ゆずちゃんのママ」


いつの間にか私には。名前さえなくなっていた。


「お母さん、よく見て下さい。周りの子を。ひーちゃんと同じくらいの子たちの瞳を。」

子供たちの通う幼稚園。

ベテランのおばあちゃん先生に呼ばれた。

次女のひーちゃん 3才。




母親の私から見ても、
ひーちゃんは変わっていた。

「病院に行ってみたらどうかしら?何か分かるかもしれないし。」


ベテラン先生は続けた。


私も頭の片隅で思っていた。


周りの子と違う。


ひーちゃんは、とにかくおとなしくて、動かない子だったのだ。


でも、私の前では良く笑う、可愛くて仕方のない子だった。


先生の言葉は半分以上耳に入らなかった。



私は1人で泣いた。


普通の子じゃなかったら?


「ママ〜。おなかすいたよ?」

いつの間にか空は太陽を飲み込んで、電気すらつけ忘れた家は、子供たちの見ているTVの光で薄暗く光っていた。




(しっかりしないと。私はお母さんなんだから。
普通の子じゃなかったら?
それはそれでいい。大丈夫だ。)