白井家ってお墓に書かれてあった。

間違いなくこれは、お兄ちゃんのお墓。

私は、ただずっとそこで立っていた。

前に行こうとしてもなかなか前へ行けなかった……

お兄ちゃんは、ここで眠っている……

そう考えると涙が出た。

私は、今までお兄ちゃんに顔合わせる資格ないと思って一度もお兄ちゃんのお墓に行かなかった。

それに行く勇気がなかったから……

雅人君は、足を止めて後ろを振り返った。

「由梨ちゃん、大丈夫? 急にごめんね……こんな所に連れて来て……でも、ちゃんと健斗に由梨ちゃんと付き合ってるって言いたかったから。それに由梨ちゃんに来させたかったから……お節介で本当にごめんね……」

雅人君は、そう言って私にハンカチを渡してくれた。

私は、それを受け取って言った。

「うん、大丈夫だよ。心配させてごめんね……ううん、雅人君は悪くないよ。ただ、私が行く勇気がなかったから……」

「そっか……でも、無理しちゃダメだよ。何かあったら俺に言って。何でも聞くから」

雅人君が優しい口調で言った。

雅人君は、優しい……

癒される……

雅人君と一緒に居ると何か心が温まって落ち着く……

雅人君が優しいからだよね。

私に気を遣わさせちゃってごめんね……

だからちゃんとしなきゃ。

「ううん、無理なんかしてないよ。私もお兄ちゃんのお墓に行こうかなって思ってたから」

私は、そう言って雅人君の隣に腰掛けて手を合わせて拝んだ。

どうかお兄ちゃんが成仏、出来ますように……

そんな願いを込めながら……

私は、拝んで雅人君の方を見た。

雅人君も真剣に手を合わせて拝んでいた。

雅人君は、拝み終わると花をいけようとした。

「あっ、雅人君。それ、私がしてもいい? 」

「あっ、うん」

雅人君は、そう言って私に花を渡した。

私は、それを受け取って綺麗にいけた。