「タケルさん」

可奈子さんの肩を抱いた悠斗が、こっちへ歩いて来た。

泣いたせいで、メイクがぐちゃぐちゃになっている可奈子さんの顔は、とても他人とは思えなかった。

―――私も痩せたら、この人ぐらいのルックスになれるのかな。

そんな前向きな気持ちになる。

「タケルさん。デートの直前に理沙さんとHするなんて、反則ですよ」

悠斗が悪戯っぽく笑った。

「こっちは現役じゃないんだから、ハンデつけろよ」

タケルはいつもの飄々とした表情に戻って笑っている。