●塩分


喫茶「キング」の前で車が止まった。


最後に? 最後に何て言えばいい?


言葉が見つかれへん………。


ウチは無言で助手席から降りた。


「んじゃ、な」



背中から、先輩の声がした……でも…ほんまに短い言葉で……それは、将来のない言葉………。



ウチは振り返り……



「うん」


と、ニコッとして……ドアを閉じた。


2人を引き裂く閉まる音がして………


ブォブォブォォ~ン~


カップルを後部座席に乗せたまま、直樹先輩の車が走り去る。



車が見えなくなってから………ウチは、
「キング」の裏まで歩いて行った。



そこには、誰もいなかった。