とりあえず自分の席に戻ったけど、そこにはあの携帯電話が残されているだけで、大吾の姿は無い。


「すみません。いったい何が?」



恵理子は思い切って、窓際の席の人に聞いてみた。



聞かれた相手は、すぐに恵理子がさっきの男のツレだと気がついた。



「あ、あなたと一緒にいた男性が、突然何かに脅えたように叫びながら飛び出していって……」


恵理子は窓の外を見る。


道路に人だかりが出来ていた。