「何言ってるんですか! 奈良や京都を廻ってるのに、片手間なわけないじゃないですか!」



「そりゃあまぁ、そうだけどさぁ、締め切りまで、まだもうちょっと時間あるだろ?」


「いやいや、もうちょっとしかないんですよ」



「でもさぁ、もう先方に言っちゃってるんだから、今更仕方ないだろう。向こうも待ってるんだから、とにかくちょっと行って来てよ」


山口は有無を言わさないとばかり、払うように手を振って促した。