パーカーにジーンズと既に私服姿なことから、彼もバイトを終え帰ろうとしていた所なのだろう。
そんな彼に手早く会話を切り上げ、歩き出そうと一歩踏み出した。その時
ーボキッ!
「!!」
「わっ、…と」
突然の右足の違和感にバランスを失った体は、カクンとその場でこけかける。けれどそれは目の前にいた彼の手に支えられ、転ぶことは免れた。
「危ない危ない…また足に傷出来ちゃう所だったね」
「あ…ありがと」
「どういたしまして。転びやすいなんて、結さん意外とおっちょこちょいなんだね」
「違う。靴が…」
そう右足の靴へ目を向ければ、履いていた赤いパンプスのピンヒールはボッキリと折れてしまっていた。