「今まで男の子やったあんたに、女の子の仕草やら作法やら礼儀教えるには限界があんのよ。
 女子だらけの中で居ったら、嫌でも身につくやろ。
 休みになったら、帰ってきなさい。
 それに、あんたが女やろうが男やろうが、あたしらの子どもには変わらん」


その言葉が胸に沁みた俺の目に、一筋の涙が流れた。


鼻頭がツンとする。


「それはそうと、千紗ちゃんとはどないしたん?
 話したんか?」


尋ねられて、更に胸が苦しくなった。


「別れた……」
「そっか……」


母さんはそれだけ呟くと、静かに部屋を出て行った。


「ほな、母さん仕事行って来るわ」
「うん」


そう言い残して。