思えばいつもそうだったのだ。
私は、小鳥すずはため息を吐いた。
机に突っ伏し、額を落とす。コンっと軽い音が響く。その音は私だけにしか聞こえない。私だけしか届かない。
「まるで、あいつと私みたいだ」
ぽそりとそうつぶやく。
つぶやいた私の今の顔を想像する。
酷い顔なんだろうなぁ。とだけ思った。


1。私だってしらない

あいつを紹介するには、時間はかからない。
あいつ=冴島ハルは、
幼馴染で、同級生で、めっちゃモテる。

イケメン。というやつらしく、周りに女子をはべらせてる。漫画とかで、よくある、そんな冗談みたいな男子だ。


とまぁ、ここまでは序章に過ぎない。
詳しくあいつの事を話そう。

でも、
百聞は一見にしかずということわざもある。


放課後、あいつに呼び出しをくらった。

「小鳥さん放課後裏庭来てくんない?」
「また、ですか」

私が机に顔を落とし、寝ていた所を起こされた。
冴島ハルの顔は笑顔だった。怖いぐらいに満面の笑みだった。
今日も今日とて、イケメンで、軽くセットされた黒髪が顔によく映える。
取り巻きの女子が軽く奇声をあげるが、特に気にしない。
何というか、いつものこと。
そう。いつものことなのだ。


冴島ハルに呼ばれ、放課後、裏庭に行く。
折り曲げているスカートを調整する。
この感じには大分慣れた私だが、やはり胸がムズムズする。

全部は冴島ハルのせいだ。

「まった?」

そんなことを考えていると、後ろから声がした。
振り向くと、そこには冴島ハルがいた。

「冴島ハル。今日は何の用?」

いつものように言葉を吐くと、冴島ハルは私の方へ近づく。

駆け足で。

「すずちゃんー♡何でそういうこと言うんだよー可愛い顔見れなくするよー(^∇^)」

冴島ハルは私にベタベタと触りにくる。
私を潰す勢いで(潰す気なのかも)私を抱きしめる。

冴島ハルは、ワンコでドSだ。
いきすぎたワンコでいきすぎたドS。

みんながいる時にはイケメン。
私といるときはこれ。

「冴島ハル。離れて」
「いやだよ。殺すぞ」
「意味わかんない」
「昔からすずちゃんは俺のオモチャだもん、ぜったい離してやんねーの」

冴島ハルの甘い言葉を聞きながら、いや、聞き流しながら私は思う。


おまえなんて、しらねーよ。