あたし達は門川君の私室の、青々とした香りのする畳の上に立っていた。


足元の複雑な図形は音も無く、瞬く間に消滅する。


あー、やっぱり花火鳴らなかったな。


ってことは、あの時は本当に凍雨君の発動の仕方に問題があったんだ。


よく事故が起こらなかったなぁ。


あ、そういえば彼って落下したんだっけ。


危なー・・・。

今度会ったらよくよく注意しとかなきゃ。


「永久、血まみれの姿で現れては騒ぎになる。着替えるがよい」


「分かった」


「急げよ。当主が忽然と消えたので、皆が慌てておるやも知れぬ」


あたしと絹糸は部屋の外へ出て、彼の着替えを待った。


異形のモノ達の襲来は、まだここまで及んではいないらしい。


たぶん門番のムク犬ブラザーズが、張り切って結界を張ってくれてるお陰だろう。


今度現世に戻ったとき、ワンちゃん用ケーキでも買ってきてあげなきゃね。


「ねぇ絹糸、あそこにいた長老達、放っておいても大丈夫かな?」


あたしを雛型にする計画はもう諦めたんだろうか?


「永久にバレた時点で、もう諦めたであろうよ」


「でもさ、クドクドしつこく訴えてたじゃん」


当主さま! 

どうか民のために天内の娘を生贄にぃぃ!っとか言って。


涙声ウルウル、さもさも必死っぽく。


「あれは牽制じゃよ」


「けんせい?」


「自分達を罰しようとしても、そうはいかぬ。真っ当な理由があってやった事なのだからな。という意思表示じゃ」


・・・・・なるほど。


ここで門川君が無理に連中を罪に問おうとすれば、また


『当主様は民の事や世界の事より、罪人の孫娘ばかりを大事にしている』

となるわけだ。