ドドドドド・・・・・!!


牛の走りは軽快で順調だった。


あれから異形のモノも襲ってこないし。


セバスチャンさんが先頭に立って進む。


さすがに牛の扱いにも慣れている様子で、余裕でドンドン突っ走っている。

しかし・・・


燕尾服姿の執事と、プリンセスドレスに身を包む女性。

そして、牛。


なんか凄い組み合わせだよなぁ。


味噌汁ぶっかけご飯の上に、キャビアとトリュフを乗っけてるみたいな違和感。


アンソニーの牛さばきも、なかなかどーして見事だった。


どうやら牛の頭に乗っかってる、左右の足の微妙な動きで操縦しているらしい。


フリッパーをパタパタさせてバランスをとりつつ、セバスチャンさんに次いで疾走する。


凍雨君は必死に牛の背中にしがみ付いている。


頑張って! 落ちないでね!


しま子も頑張って後を付いていっていた。


牛本人も賢いから、しま子の腕の未熟さをカバーするように軽快に走ってくれている。


ただ、あまりにも軽快すぎて・・・


寒い~~~!!!


いや寒い! マジ寒い!


真冬の雪原の中をオープンカーで突っ走ってるようなものだから、向かい風がハンパない!


しま子が気を使って自分の赤い半纏をあたしに貸してくれたけど・・・。


うぅぅ、でもこれでも寒いよぉ~。


剥き出しの顔にビュービューと氷のように冷たい風が当たって、辛い!

凍傷になりそう!


うあぁぁ、顔が、体が凍るぅ~! 耳が痛い~!


でも急いで進まなきゃ。ここでスピード緩めてなんかいられないもん!


走れ! 急げ牛ー!!


身の凍る寒さに耐え続けていると、すっぽりと雪に覆われた権田原の里が見えてきた。


「皆様! 到着いたしました!」