罪を犯した者の身内は、どうしてもその余波を受ける。


門川君はあたしの仲間。身内だ。


だからやっぱりあたしのせいで責められている。


あたしの事を庇うから、そのぶん余計にまた責められる。


守らなければならない人の立場を、あたしは危うくしてしまっている。


ギュッと握り締めた手の平に爪がギリギリ食い込む。


あたしが隣にいたら千年前の雛型の家族同然、彼はどんどん不幸になってしまう。


過去の歴史がそれを証明している。


たまらなく苦しい感情が積乱雲のように心の中に湧き起こった。


その感情があたしを責め立てる。


あたしのじー様の罪のせいで、あたしが仲間でいるせいで。


あたしが彼を不幸にしてしまうんだ。


あたしが。

このあたしが! あたしが・・・・・!!


突然びょん!っと絹糸が、あたしに向かってムササビのごとくに飛び跳ねた。


柔らかな体躯がしなやかに伸び、軽々とあたしの顔面と同じ高さになる。


・・・へ? なに??


― ビシィッ! ―


と、張り手一発、絹糸の強烈な猫パンチを鼻の頭に食らう。

いてっ!!


クルリと絹糸は身を翻し、長い尻尾でもう一回、ビシッ!と鼻の頭を攻撃した。


うぐっ! いてー!!


絹糸はシュタンッと床の上に華麗に着地した。


な・・・な・・・


「なにすんのよー! あんた今、わざと鼻を狙ったでしょー!?」


あたしは指先で鼻をつまみ上げながら抗議する。


これ以上低くなったらどーしてくれんのさ! 密かに気にしてる部分なのに!


成長のジャマにならないように、マスクもつけないようにしてるんだぞ!


その涙ぐましい乙女の祈りをあんた全部無駄にするつもりなのか!?


絹糸が半目であたしを見上げている。


「お前があまりにも分かりやすい顔で落ち込んでおるからじゃ」


「人が落ち込んでたら鼻を潰すのか! あんたは!」


「まったく単細胞は困るわい。よいか? 千年前と現在とを混同するでない」


「え?」


「これだから話したく無かったんじゃよ。あっさり悪影響を受けおって」