そう言って、何事も無かったかのように七海はランチプレートを食べ始めた。食べ方が上品で、見ているこちらも食欲を唆られる。七海のことが心配ではあったが、見事に食欲を唆られて、私は再び眼前のランチプレートに箸をのばした。

(…おいしい。)

久々に食べた肉じゃがは、食材に味が良く染みていて、とても美味しかった。


* * *

「お昼誘ってくれてありがとうハヤテくん。」

食事も終わり、もうすぐ昼休みが終わるという頃、私たち四人は学食を出た。食事中はハヤテくんの独壇場と言っても過言ではなかったけれど、話題提供があまり得意ではない私からしたらそのことは大変有難かった。突き当たりの階段を上り、私たち二年生の教室がある二階へ着いたところで私はハヤテくんに礼を言った。

「えへへ、こっちこそありがとう!また一緒に食べようね!」
「うん。…高萩くんも、なんか無理に付き合わせちゃったみたいでごめん。」
「いやっ…別に…俺は」

この後彼等は一旦生徒会室へ向かうらしく、私たちを教室に送り届けると「じゃあまた放課後!」と言って手を振って去って行った。その後ろ姿をしばらく眺める。すると突然、ハヤテくんの斜め後ろを歩いていた高萩くんが急に立ち止まり、意を決したように振り返った。ずんずんとこちらに引き返してくる。その足は私の前で止まった。

「……む、」
「む?」
「…無理に付き合った訳じゃない。」
「え?」
「昼飯、俺もまた一緒に食っていいか?」

恥ずかしいのか、爪の先で鼻の頭をかく高萩くんの頬はほのかに赤かった。『一緒に食事をして楽しかった』、そう彼は言ってくれているのだろう。高萩くんのことが少しだけ分かった気がする。嬉しくなって、思わず微笑んだ。

「勿論!また一緒に食べようね」

その言葉に、高萩くんは照れたように片眉を下げて笑った。

「浜田も。櫻木との昼飯の時間邪魔しちまって悪かった」
「いいよ別に。気にしてない」
「…それなら、良かった」