「今さ、俺とナガレとトーコと浜田の四人でお昼ご飯食べようって話になってたんだ!ね、いいよねナガレ!」
「……………別に、いいけど」
「やったー!じゃあ俺空いてる席探してくるから、みんな先に食券買ってきなよ!」
「え、ちょっ、おい!」

勢い良く駆けていったハヤテくんの背中は既に小さい。ムードメーカーがいなくなって少々気まずい雰囲気になってしまった場を持ち直そうと、私は懸命に頭を回転させる。

「…じゃ、じゃあハヤテくんのお言葉に甘えて先に食券買いに行こっか!」
「……………………」
「……………………」
「…い、行かない?」
「……行くか」

変わらず気まずいままの私たち三人は、人が最も集まる食券機の方向へ黙って歩き出した。ガヤガヤと騒がしい食券機列の最後尾につき、気疲れからなのか溜息が一つだけこぼれる。途中で「席は俺のジャケットで確保してきたから安心して!」と胸を張るハヤテくんと無事に合流したことによって、長い沈黙とも言える状況から打破することが出来た。

ハヤテくんが、身につけていたジャケットを犠牲にしてまでして獲得してくれた四人掛けのテーブルにつく。眼前で、塩ラーメンの匂いを漂わせたハヤテくんが、はにかんで白い歯を見せた。

「このラーメンさ、今日だけ特別にチャーシューもう一枚入れてくれるサービスやってたんだって!だからほら見て、三枚!嬉しいなっ!」

いただきまーす!と言って勢い良く麺を啜り始めたハヤテくんへ、高萩くんが「汁が飛ぶだろうが!」と呆れた顔で抗議した。当事者であるハヤテくんは、眉をハの字にしながら麺を咀嚼する。その光景を微笑ましく思いながら、私は自分のランチプレートに手をつけた。

そこで、ふと感じた違和感。

「七海?どうしたの?食べないの?」

元々彼女はそんなに饒舌な方ではないけれど、今の状況のように黙り込むことは珍しい。名前を呼ばれた七海は一瞬ピクリと肩を震わせ、私の呼び掛けに応じた。

「…え?あ、うん。たべるよ。」
「もしかして具合悪い?救護室行く?」
「違うから大丈夫。ただぼうっとしちゃってただけ。心配かけたね、ごめん」
「…でも、」
「本当に大丈夫。桐子は心配性なんだから全く。…ほら!食べよ。ご飯冷めるよ」