そんな事を考えている間に、あたしのケータイをカチカチと操作したのか。
「ほら、ケータイ」
ぽんっとあたしの手にケータイを返すと、スタスタと屋上を出て行く。
そのまま屋上を出て行くのかと思っていたら、扉の前で立ち止まった。
「これからは、俺のメールと電話には必ず出ろよ?」
そう一言あたしに残して屋上を立ち去って行った。
「な、なんなのよーーー!!!」
あたしの叫ぶ声が響いた。
ケータイを確認してみると、“夏野 逸輝”と書かれた連絡先が追加されていた。
ついさっきまでなかったこの連絡先はあいつが登録したもの。
つまり……、
「あ、あいつが王子様⁇」
「ありえない………」
あたしの呟きが夕焼けの空に溶けていった。