バランスを崩してしまったあたしはそのまま地面に倒れる‼
咄嗟にギュッと目をつぶったのだけど。
何故かいくらたっても身体を打ちつける感覚と痛みがない。
不思議に思ってゆっくり目を開けると。
逸輝があたしの事を受け止めてくれたみたい。
うん、そこまでは良いの。
受け止めてくれたという事は。
あたしは逸輝に抱き締められているのだ。
「い、逸輝……ありがとう」
「………」
とりあえず、受け止めてくれたお礼を言ったのだけど。
………何にも返答がない。
いつもなら、「おう」とか何とか言ってくれるのに……。
「あ、あの…………もう大丈夫だから離して⁇」
離して欲しいと言ってみるものの、離してくれる気配はゼロ。
むしろ、さっきよりも腕の力が強くなった様な。
「逸輝、戻らないと時間がないよ⁇」
時間が無い事を伝えて再度離してもらおうと試みる。
「…………ねぇんだよ」